負けヒロインという概念の歴史を語る上で、決定的なパラダイムシフトをもたらしたのが、雨森たきび氏によるライトノベル原作の『負けヒロインが多すぎる!』(通称:マケイン)です。本作はアニメ化を通じて社会的なブームを巻き起こし、負けヒロインの立ち位置を根本から塗り替えました。
従来のラブコメが「誰が勝つか分からないレース」を描いていたのに対し、『マケイン』は「すでに本命の恋に破れ去ったヒロインたち」が次々と登場し、失恋の傷を抱えながら主人公と奇妙な交流を深めていく構成をとっています。
メインキャラクターである八奈見杏菜をはじめとするヒロインたちは、大食いであったり、自意識過剰であったり、未練たらたらで主人公に愚痴をこぼしたりと、従来の「お人形のような完璧美少女」とは真逆のリアルなダメさを見せつけます。この「敗北後の生々しくも愛嬌たっぷりな姿」が読者のツボを刺激し、「失恋したからこそ輝く、新たなヒロイン像」を確立しました。
敗北は物語の終わりではなく、彼女たちの真の人生が始まるスタート地点である――この価値観の転換こそが、最新のカルチャートレンドとして定着しています。