彼女の歩みを語る上で避けて通れないのが、高校野球の過酷な現実と青春の暗部を抉り出した映画『百八』への出演だ。東宝をはじめとするメジャーな配給網が席巻する日本映画界において、泥臭くも圧倒的な熱量を放ったこの作品で彼女が残したインパクトは、単なる脇役の枠を完全に踏み越えていた。
登場人物たちの葛藤が交錯する群像劇の中で、彼女は決して過剰に声を荒らげることなく、ただそこに佇む視線と息遣いだけで空気を一変させた。リアリズムを重んじる骨太な日本映画の現場で叩き上げられた経験が、後のキャリアを貫く「嘘のない芝居」の確固たる礎となったことは疑いようもない。