画面をタップすれば文字が打てる時代に、あえて数千円から数万円のペンケースや文房具に投資する意味とは何か。都内のIT企業に勤める30代男性は「画面に向かい続ける一日の中で、お気に入りのペンを取り出し、質の高い革のケースを開く瞬間だけが、思考をリセットできる静寂の時間になる」と語る。
この心理的変化こそが、現在の高級・機能性文具ブームの原動力だ。単なる作業道具としての文房具なら安価で手に入る。しかし、手に触れる質感、ジッパーを開閉する音の心地よさ、内部のポケットレイアウトがもたらす無駄のない所作——そうした「体験価値」に人々はお金を払っている。