国内の近代サーカス史を紐解くと、昭和から平成初期にかけて、舞台設営中や本番中の重大事故が散発的に報告されてきた。特に観客の目の前で演者が宙を舞う「空中ブランコ」は、わずかなタイミングのズレや器具の金属疲労、あるいはネットの張り具合の不備が即座に命取りとなる。かつて一世を風靡し、惜しまれつつも幕を閉じた「キグレNewサーカス」の時代から、演者の安全管理は常に興行の成否を分ける急所であり続けた。
高所からの転落による頭骨骨折や内臓破裂など、記録に残る重大事故事例の多くは、安全ネットの不適切な展張や命綱(ロンジ)の装着基準の曖昧さに起因していた。当時は「芸を極めるための危険」として片付けられがちだった労働環境だが、現代の労働安全衛生法の観点から再検証すると、明白な安全配慮義務の欠如が指摘されるケースも少なくない。