インターネット上のQ&AサイトやSNSでは、「買ってきたさつまいも苗をそのまま深く垂直に挿したら、葉が茶色くカラカラに萎れて全滅した」というトラブル報告が毎年5月中旬から6月にかけて急増します。この現象の背景には、さつまいも特有の発根生理と地中環境のミスマッチが存在します。
さつまいもは、切り取られたつるの「節(葉の付け根)」から不定根と呼ばれる新しい根を発生させます。このとき、土壌に垂直に深く突き刺してしまうと、地中深部は温度が上がりにくいうえに通気性が悪く、苗の下半分が酸欠状態に陥ります。根を出すエネルギーを奪われた苗は、初夏の強い日差しによって葉から水分だけを一方的に奪われ、極度の脱水状態となって数日で枯死に至るのです。
さらに深刻なのが、定植の時期尚早による低温障害です。さつまいもの原産地は熱帯中南米であり、活着に必要な限界地温は15℃以上、理想的な地温は18℃〜20℃以上とされています。地域ごとの平均気温だけに目を奪われ、地温が温まりきっていない5月上旬の冷え込む土壌に植えてしまうと、苗は根を張るどころか低温腐敗を起こします。「とにかく土に挿せば勝手に根付く」という認識こそが、多くの栽培者を挫折させる最大の落とし穴です。