HTBエナジーというブランドを正しく理解するには、同社が歩んできた資本の歴史を紐解く必要があります。もともと同社は、大手旅行代理店エイチ・アイ・エス(HIS)がハウステンボス(HTB)の再生事業の一環として設立したエネルギー企業でした。当時はHISグループの安心感と「旅行代金が割引になるプラン」などを武器に、クリーンで親しみやすい新電力として急速にシェアを伸ばしました。
しかし、コロナ禍における旅行需要の壊滅と世界的なエネルギー調達コストの暴騰がHIS本体を直撃。2026年、HISはHTBエナジーの全株式を大手通信販売代理店などを傘下に持つ光通信グループの関連企業へ売却しました。この親会社交代を契機に、事業運営の方針は「薄利多売の認知拡大フェーズ」から「市場変動リスクを即座に価格転嫁する徹底した採算重視フェーズ」へとシフトします。
この転換によって導入されたのが、JEPX価格を織り込む「市場連動型の電源調達調整費」です。自前で大規模な発電所を持たない独立系新電力にとって、倒産を避けるための合理的な防衛策であったことは事実ですが、リスクをエンドユーザーが直接背負う形となったため、従来の「大手より安くて安心なHISのでんき」と信じ込んでいた長期契約者の間に深い不信感と動揺を生む結果となりました。