多くの読者が最も息をのんだのが、物語のクライマックスにおける生存者たちの運命です。日米合わせて1万人以上の戦死者を出したペリリュー島の戦いにおいて、守備隊本部の壊滅後も洞窟に潜み続けた主人公・田丸一等兵たちの戦いは、1945年8月15日の玉音放送では終わりませんでした。
米軍の圧倒的な物量と猛攻により守備隊が全滅認定された後、田丸や頼れる戦友の吉敷、冷徹ながら部下を率いた小杉伍長、そして泉や島田といった兵士たちは、暗黒の地下壕で飢えと渇き、米軍の掃討作戦に脅かされながらゲリラ戦を継続します。そこにあったのは英雄的な武勇伝ではなく、「ただ生きたい」という剥き出しの生存本能でした。仲間が一人また一人と病や銃火に倒れていく過酷な潜伏生活の中で、彼らは外部の情報から完全に遮断されていきます。
転機が訪れたのは、日本の敗戦から約1年半が経過した1947年4月のことでした。元軍人の説得工作によって戦争の終結を信じた生き残りたち34名(史実における「三十四会」)は、ついに米軍へ投降します。田丸と吉敷もその中に含まれており、奇跡的に生きて祖国の土を踏むことが叶いました。
最終回において、戦後の復興を遂げる日本社会で田丸は漫画家としての道を歩み始めます。仲間たちが命を落としたあの珊瑚礁の島での出来事、理不尽に奪われた命の重みを風化させないため、彼はペンを握り続けました。物語のラストは、現代へと続く平和な日常の風景と、かつて戦場に散った若者たちの笑顔が重なり合う静謐な祈りで締めくくられます。生き残った者が背負う喪失感と、記憶を継承するという重い責務が読者の胸を強く打ちます。