なぜ、誰もが憧れた大舞台への切符を手放すアーティストが後を絶たないのか。表向きの理由は「スケジュールの都合」や「単独公演への集中」とされるケースが多いが、内情はもっとシビアだ。長時間の拘束、リハーサルに割かれる膨大な時間、そして演出上の細かな制約。これらがもたらすコストと、出演によって得られるプロモーション効果を天秤にかけたとき、明らかに採算が合わないと判断するマネジメントが急増している。
これに対し、NHK(日本放送協会)側も選考基準の抜本的な見直しを余儀なくされている。かつて重宝されたCDのセールスデータや有線リクエストはもはや過去の遺物に近い。現在、制作陣の指標の中心にあるのは、デジタル空間における熱量と拡散力だ。しかし、このアルゴリズム主導の選考が新たな軋みを生んでいる。第76回NHK紅白歌合戦に向けたキャスティング会議でも、実態の見えにくいバイラルヒットと、従来の視聴者層が求める知名度とのギャップに制作陣が激しく苦悩する様子が浮き彫りとなった。