SNSやネット上の掲示板では、「損をしないためには、他人に一切ギブせず自分勝手に生きるべきだ」「ずる賢いテイカー(搾取者)こそが最強の勝者である」といった過激な言説が散見されます。しかし、社会心理学および組織行動論の厳密な実証データは、この俗説を明確に否定しています。
ペンシルベニア大学のアダム・グラント教授による名著『GIVE & TAKE』の研究データによると、社会で最も低い業績に沈むのは「自己犠牲的なギバー(与える人)」ですが、同時に社会の最上位で最大の成功と信頼を勝ち取るのもまた「戦略的なギバー」であることが証明されています。両者を分かつ唯一の違いは、「自己利益と他者利益のバランス」を保ち、悪質なテイカーを毅然と排除できるかどうかです。
「いい人をやめる」という言葉は、決して「冷酷で利己的な人間になる」ことを意味しません。「無防備に搾取されるお人好し」から卒業し、自分自身の時間・エネルギー・尊厳を守る防壁を築いたうえで、健全な協力関係を結ぶスタンスへと舵を切ることが本質です。ネット上の「冷酷になれ」という誤ったアドバイスを鵜呑みにして孤立することは、別の意味での甚大な損失を招く盲点と言えます。