石原さとみは、葵みどりという人物に血を通わせるため、クランクイン前から並々ならぬ準備を重ねていたという。現役の薬剤師に直接取材を重ね、業務のタイムスケジュールや精神的なプレッシャー、さらには「白衣の下に何を着ているか」「ポケットの中に何を入れているか」といった細部にまで質問を浴びせた。
劇中で見せた素早い調剤手技は、自宅に練習用の器具を持ち帰り、何時間も指先の感覚を叩き込んだ成果だ。薬のシートから錠剤を押し出す「ヒート抜き」のテンポ一つをとっても、経験者が見て違和感を抱かないレベルにまで研ぎ澄まされていた。
感情をストレートにぶつける熱血漢でありながら、自身の無力さに打ちのめされる繊細さ。葵みどりが流す涙には、医療業界で働く誰もが一度は経験するであろうジレンマが宿っていた。石原さとみという俳優の持つ圧倒的な引力と熱量が、キャラクターを単なる記号から生身の人間へと昇華させた瞬間だった。