東映京都撮影所は、日本の時代劇黄金期を創り出した聖地である。そこには顔も名前もクレジットされない大勢の大部屋俳優たちがいた。彼らは単に日銭を稼ぐためではなく、職人としての誇りを胸に日々現場に立っていた。福本もまた、その過酷な下積み時代を黙々と生き抜いた一人だ。
撮影現場の独占エピソードとして語り継がれるのは、彼が衣装を決して汚さない工夫や、先輩から盗んだ技を夜な夜な一人で練習していた地道な努力である。あるベテランスタントマンは「福本さんは斬られる直前まで相手の目を見ていた。恐怖ではなく、相手を引き立てるための間を測っていたんだ」と述懐する。裏方に徹しながらも一瞬の美に命を懸ける「斬られ役」の美学は、撮影所の職人たちの魂そのものであった。