地元住民や愛好家にとって、初夏の根曲がり竹採りは代々受け継がれてきた大切な生活文化であり、時に貴重な現金収入源でもある。シャキシャキとした独特の歯ごたえと爽やかな風味は唯一無二で、市場や直売所では高値で取引される。地元で古くから林業に従事してきたベテラン作業員でさえ、「あの味を知ってしまうと、危険と分かっていても山に入りたくなる」と漏らすほどだ。
だが、その代償はあまりにも大きい。根曲がり竹が群生するチシマザサの藪は、大人の背丈を遥かに超える密林状になっている。視界はわずか数メートル。見通しのきかない藪の中で夢中になって下を向いて作業を続けていると、すぐ目と鼻の先に潜む気配に気づくことは不可能に近い。結果として、鉢合わせによる突然の襲撃事故が多発するのだ。