ネット上のレシピ情報において、長年議論が分かれてきたのが「わかめは水で戻してから混ぜるべきか、乾燥のまま混ぜるべきか」という問題です。結論から言えば、現代の調理科学とおにぎりの構造力学に基づくと、乾燥わかめそのまま混ぜる理由には極めて明確な利点が存在します。
炊きたてのご飯は、表面から絶えず高温の水蒸気を放出しています。この状態で水戻ししたわかめを投入すると、わかめに含まれる水分とご飯の蒸気が合わさり、米の表面にある保水膜(おねば)が過剰に水分を吸ってふやけてしまいます。これが、時間が経ったおにぎりがベチャつき、パサパサに崩れる元凶です。一方で、細かく砕いた乾燥わかめを熱々のご飯に直に混ぜ込むと、わかめが米表面の余分な蒸気を吸い取りながら約5〜10分かけて自らの力で自然復元します。この水分交換によって米粒の周囲が適度に引き締まり、冷めても一粒一粒が自立した極上の食感が完成します。
ただし、ここで多くの人が直面するのが「そのまま混ぜると磯臭くならないか」という懸念です。取材で判明した生臭くならない下処理の真相は、わかめの「酸化」と「品質」に関係しています。
乾燥わかめ特有の臭みは、長期間空気に触れて脂質が微小酸化した際に発生します。生臭さを完全に遮断するためには、以下の2点の下処理が決定打となります。
- フライパンでの数十秒の「乾煎り」:細かく刻んだ乾燥わかめを油を引かないフライパンで弱火で20〜30秒ほど乾煎りする。これにより酸化臭が熱で揮発し、香ばしい磯の風味だけが凝縮されます。
- 産地と加工工程の選定:湯通し塩蔵後に素早く乾燥させた国産(三陸産や鳴門産)の肉厚なわかめを選ぶこと。加工工程が不十分な安価な端材わかめは、戻った際にドリップが出やすく臭みの原因になります。