ティーン向けファッション誌『nicola』のトップモデルとして同世代からカリスマ的な支持を集めていた新垣結衣が、本格的な連続ドラマのレギュラーとして抜擢された作品こそが、2005年7月期の『ドラゴン桜』(TBS系)でした。彼女に与えられた役柄は、主人公・桜木建二(阿部寛)が受け持つ落ちこぼれ特進クラスの生徒・香坂よしの。当時の視聴者に強烈なインパクトを与えたのは、現在のナチュラルな透明感とは対極にある、いわゆる「お水系コギャル」のビジュアルでした。
濃いアイラインに日焼け肌風のベースメイク、華美なアクセサリーとミニスカートという出で立ちは、当時の渋谷系ストリートカルチャーをリアルに反映したものでした。ネット上やSNSでは今なお「再放送や配信で初めて見て腰を抜かした」「ガッキーにこんなギャル時代があったのか」という驚嘆の声が後を絶ちません。しかし、このキャラクター造形は単なる話題作りではなく、物語上極めて重要な意味を担っていました。
香坂よしのは、山下智久が演じる幼馴染の矢島勇介に執着し、「勇介とずっと一緒にいたいから」という極めて刹那的かつ依存的な動機で東大特進クラスに飛び込みます。制作関係者の回顧録によると、当時の新垣結衣は本格的な演技経験が浅く、大声で感情を爆発させるシーンや、ふてくされた思春期特有の反抗心を表現することに日々苦心していたと伝えられています。しかし、回を重ねるごとに「男の背中を追うだけの自分」に疑問を抱き、自らの知性と意志で未来を切り拓こうとする内面的な自立のグラデーションを、当時17歳の彼女は見事に演じ切りました。初期のぎこちなさが役柄の未熟さと見事にシンクロし、回を追うごとに鋭さを増していった眼差しこそ、彼女が女優としての評価を決定づけた契機でした。