当時の日本映画界を牽引していたのは、間違いなく日活株式会社が送り出すハイペースな娯楽作だった。石原裕次郎の爆発的なヒットに続き、日活アクションの新たなエースとして担ぎ上げられた赤木圭一郎。映画館には立ち見が出るほどの観客が詰めかけ、スクリーンから放たれる熱気が街を席巻していた。
その一方で、銀座の夜を彩っていたのは美輪明宏が歌う本物のシャンソンだった。フランスの原曲が持つ詩情に自らの過酷な生い立ちを重ね合わせ、魂を削るように歌う美輪のステージは、単なる音楽を超えた演劇的体験として知識人層を熱狂させていた。
太陽の光を浴びて疾走するスクリーンの赤木と、紫煙の向こうで夜を統べる美輪。昼と夜、光と影のように分かたれた二つの世界は、当時の若者たちが抱いていた既成概念への反逆という一点で、不思議なほどシンクロしていたのである。