かつては「刺されたらすぐに冷やす」という対処が一般的だったが、現在の救急皮膚科領域における常識は一変している。最新の応急処置ガイドで強く推奨されているのが「温水洗浄殺毒法」だ。
ムカデの毒に含まれるタンパク質系の酵素毒は、熱に弱いという極めて重要な特性を持つ。噛まれた直後(できれば5分以内)に43℃〜45℃程度のやや熱めのお湯で傷口を10分〜20分間洗い流すことで、毒素の失活(無力化)が期待できるのだ。シャワーの流速を利用して、皮膚表面についた毒をしっかりと洗い流すことがポイントとなる。
ただし、注意が必要な点もある。40℃以下のぬるま湯では逆に血流が促進されて毒が全身に回りやすくなり、46℃以上の熱湯では火傷のリスクが生じる。また、噛まれてから何時間も経過した後に温めると、炎症症状を悪化させる危険がある。発症直後のお湯洗浄、それ以降は冷感湿布や氷嚢による消炎冷却へと切り替える判断が肝要だ。