地方都市で行われたロケの目撃情報によれば、クランクイン初日から現場の空気はピンと張り詰めていた。テストの段階から本番さながらの熱量で対峙するふたりに対し、スタッフ陣からも感嘆の声が漏れたという。
「挨拶を交わした瞬間、二人の間にはすでに劇中の役としての距離感が出来上がっていた」と現場スタッフは明かす。余計な雑談は一切挟まず、カメラが回ると即座に呼吸が同調する。一度『流浪の月』という極限の現場を共にした二人だからこそ到達できる、言葉を超えた演技のセッション。そこには長年組んできたジャズミュージシャンの即興演奏のような、危うくも美しい調和が存在していた。