リゾート地としての進化を加速させる石垣島にあって、この店の電話回線は今なお日本一つながりにくい回線の一つかもしれない。営業開始前の夕刻から受話器を握りしめ、リダイアルボタンを押し続ける行為は、もはや旅行前の「儀式」と化している。
「3ヶ月前から毎日かけて、42回目にやっとつながった」——都内から訪れた30代の観光客は興奮冷めやらぬ様子でそう語る。予約システムが電子化し、AIがテーブル管理を担う時代になっても、ひとしの人間味あふれる電話対応体制は変わらない。この「手に入りにくさ」こそが、体験価値を極限まで跳ね上げる調味料になっている側面は否定できない。
しかし、単なる話題性だけでこれほどの集客が持続するはずもない。過剰な期待を胸に暖簾をくぐった客を、ひとしは毎回、期待以上のクオリティでねじ伏せてきたのだ。