『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』に登場する「ヤシマ作戦」とは、劇中で日本全国の電力を一カ所に集め、未知の刺客である使徒を狙撃する極秘作戦の名称である。このSFアニメの作中描写が、現実の電力危機に直面した日本国民のイメージと鮮烈に合致した。
架空の日本列島が停電し、一つひとつの街の明かりが消えていく映画の一幕は、震災当時の現実の風景と恐ろしいほどのシンクロニシティを見せた。しかし、アニメの劇中では全国民の電力を合わせることで危機を突破したのに対し、現実の「ヤシマ作戦」では国民一人ひとりが電力を手放すことで電力網の崩壊(ブラックアウト)を防ぐという対照的な逆転の発想が生まれた。
優れたSFアニメが持つメタファー(暗喩)の強さは、時に冷たい行政の呼びかけ以上に人々の感情を動かす。架空の物語に宿るレジリエンスのイメージが、大混乱に陥った現実世界のパニックを抑え込み、理知的な行動へと導く触媒となったのだ。