文化庁が取りまとめた「敬語の指針」では、敬語を単なる上下関係の誇示ではなく、相互尊重と円滑な人間関係を構築するためのコミュニケーションツールと位置づけている。この指針に基づけば、どれほど文法的に間違っていなくとも、相手に疎外感や不快感を与える表現は、機能的な敬語とは呼べない。
日本語学・言語コミュニケーションの第一人者である金田一秀穂氏は、相槌・敬語表現における「感情の共有」の重要性をたびたび指摘している。金田一氏は、言葉の表面的な丁寧さよりも、その奥にある「相手への関心と敬意のトーン」こそが対話の本質であると説く。文法的にどれほど整っていても、記号のように発せられる「左様ですか」は、相手への心理的距離を一方的に広げてしまうのだ。
現代の言語学的知見においても、相槌は単なる「受話の合図」ではなく、「相手の感情を受け止めたという共鳴のサイン」であることが求められている。「左様ですか」という記号的な応答がビジネスの現場で敬遠されるのは、まさにこの共鳴プロセスを遮断してしまうからに他ならない。