もともと甲状腺に素因や疾患を抱えている方は、健康な人に比べてヨウ素の摂取量に対して極めて敏感に反応します。病態によって求められるアプローチが正反対となる場合があるため、正確な理解が欠かせません。
橋本病(慢性甲状腺炎)における過剰摂取のリスク
成人女性の約10人に1人が潜在的に持っているとされる「橋本病」は、自身の免疫が甲状腺を攻撃して慢性的な炎症を起こす自己免疫疾患です。橋本病の患者や抗体陽性者がヨウ素の過剰摂取を続けると、先述の抑制機能から回復できなくなり、本格的な機能低下状態に陥る確率が跳ね上がります。
現れる甲状腺機能低下症の症状としては、無気力感、著しい疲労感、皮膚の乾燥、便秘、体重増加、むくみ、寒気などが挙げられます。このため、専門医のガイドラインでは橋本病と海藻の制限について言及されており、昆布出汁の常用を控えるとともに、わかめの連食にも慎重さが求められます。
バセドウ病とわかめの影響
一方で、甲状腺ホルモンが過剰に作られて動悸や急激な体重減少、手の震えなどが起こる「バセドウ病」の場合は事情が異なります。治療法として放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)を実施する前後では、薬の取り込みを妨げないために厳格な海藻断ちが命じられますが、通常の抗甲状腺薬による内服コントロールが安定している時期であれば、わかめを常識の範囲で食べる分には重篤な悪化を招くケースは稀です。
いずれの疾患においても共通する甲状腺疾患の食事注意点は、「自己判断で極端な摂取や完全断絶を決めつけない」ことです。血液検査の数値(FT3、FT4、TSH)の推移を主治医と共有しながら、個別の摂取基準をすり合わせることが身体を守る唯一の確実な手段です。