原作ファンにとっても最大の衝撃作であった長編エピソード「島編」の映像化は、観客の倫理観を根底から揺さぶる結果となった。人魚の肉を食べれば永遠の命が得られるという不穏な伝承、そして大切な仲間を奪われたセイレーンによる果てしない執念と激怒。
映画が突きつけたのは、単純な二項対立としての「勧善懲悪」ではない。セイレーンの激昂には揺るぎない動機があり、犠牲になった者たちの悲哀もまた本物だった。スクリーンに映し出されたのは、島民たちの保身と残酷な選択、そして持たざる者が生き残るために支払うあまりにも高い代償だ。誰かを守るための正義が、別の誰かにとっては絶望的な悪夢と化す。正義の不在とエゴの激突こそが、本作が観客の心に遺した重々しい爪痕である。