愛知県の和服文化を語るうえで外せない存在がある。400年以上の歴史を誇る「有松・鳴海絞り(ありまつ・なるみしぼり)」だ。慶長15年(1610年)、名古屋城築城のために集まった人々によって生み出されたこの伝統工芸は、現在も緑区有松を中心に継承されている。
近年、名古屋市内の浴衣レンタルショップでは、量産型のポリエステル浴衣だけでなく、この伝統的な有松絞りをレンタルラインナップに加える動きが活発化している。職人がひとつひとつ手作業で括り、染め上げた絞り染めは、独特の凹凸(肌ざわり)を持ち、汗をかいても肌にまとわりつかない。実用性と美しさを兼ね備えた至高の布地だ。
一方で、Z世代を中心に人気を集めるのが、レトロモダンやレースをあしらった洋風テイストの浴衣である。くすみカラーの帯や、チュール素材の帯揚げを組み合わせたスタイルは、SNS時代の写真映えを意識した都市型トレンドと言える。伝統と現代的感性が同じ街の中で共存していることこそ、名古屋の浴衣シーンの最大の特徴だ。