『窓ぎわのトットちゃん』という象徴的なタイトルには、二重の文脈と深い問いかけが込められています。
第一の由来は、トットちゃんが最初の小学校で実際に窓辺に立ち続け、外の景色や通行人に気を取られて授業から浮いていた物理的な「窓ぎわ」の記憶です。周囲の大人の目には「落ち着きのない問題児」と映り、教室の枠組みから排除された象徴の場所でした。
第二の由来は、単行本が執筆・刊行された1980年前後に社会現象となった「窓際族」という流行語です。出世コースから外れ、会社の窓際に追いやられた中高年サラリーマンを指す言葉として定着していた世相に対し、著者の黒柳徹子氏は自著のあとがきや対談で次のように語っています。
「私は最初から窓ぎわに追いやられていた。でも、窓ぎわにいたからこそ見えた景色があり、受け止めてくれるトモエ学園に出会えた」。
つまり、社会的なレールから外れた存在であっても、その個性をそのまま肯定し、温かく包み込む教育環境さえあれば子どもは健やかに花開くという、痛烈な文明批評と人間賛歌がこのタイトルには刻まれています。