私生活での波乱に満ちた幕引きの一方で、宇津井健さんが日本のテレビ・映画史に刻んだ功績は不滅です。鍛え上げられた身体能力を活かしたアクション俳優から、重厚な演技派俳優へと進化を遂げ、数々の金字塔を打ち立てました。
特に1970年代に社会現象となった『赤いシリーズ』では、山口百恵さんの父親役をはじめとするキーパーソンを熱演。「日本で最も理想的な父親」としてのイメージを確立し、茶の間から絶大な信頼を寄せられました。撮影現場では若手俳優に対して礼儀正しく接し、百恵さんからも実の父親のように慕われていた逸話は有名です。
平成に入ってからは、橋田壽賀子ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』において、藤岡琢也さんの後を継ぎ岡倉大吉役を好演。温かく家族を見守る家長を演じきり、晩年まで第一線で輝き続けました。どのような役柄であっても誠実さと品格を失わない姿勢こそが、宇津井健という名優の真骨頂でした。