初心者が行書を学ぶ際、多くの書道教室では楷書の習得を前提とする。理由は明白だ。楷書で文字の正しい構造と基本的な筆法を身につけなければ、行書の「崩し方」を理解できない。建築に例えるなら、楷書は設計図、行書はその応用だ。
学習の第一段階では、行書の古典を臨書する。王羲之の「集字聖教序」や「十七帖」、日本では空海の作品や高野切などが教材として用いられる。臨書とは手本を忠実に模写する訓練法で、筆の動きや字形を体に覚え込ませる。
実践的な練習方法
現代の書道教育では、段階的な練習法が確立されている。まず単体の文字を繰り返し書き、次に二字・三字の連綿を練習する。「の」「は」といった平仮名との組み合わせも重要だ。日本語の文章では漢字と仮名が混在するため、両者の調和が求められる。
筆の選択も成果に影響する。行書には羊毛と鼬毛を混ぜた兼毛筆が適している。適度な弾力と柔らかさを持ち、連綿の表現に適しているからだ。硬い筆では流麗な線が出にくく、柔らかすぎる筆では制御が困難になる。