クラゲに刺されることと納豆アレルギーが結びつく理由は、両者が保持する特定の化学物質にあります。その物質こそが「ポリガンマグルタミン酸(PGA)」と呼ばれるアミノ酸の重合体です。
ポリガンマグルタミン酸は、納豆特有の糸を引く「ネバネバ成分」の主成分として知られています。しかし驚くべきことに、この物質はクラゲの触手にある刺胞(毒針)の粘液にも高濃度に含まれています。クラゲは獲物を捕らえたり外敵を攻撃したりする際、刺胞から毒とともにポリガンマグルタミン酸を注入します。
海でサーフィン中にクラゲに刺されると、皮膚のバリア機能が破壊された傷口からポリガンマグルタミン酸が体内へ侵入します。すると人間の免疫システムがこれを「異物(アレルゲン)」と認識し、体内に対抗するための「IgE抗体」を作り出します。皮膚を介してアレルギー物質が記憶されるこの現象を「経皮感作(けいひかんさ)」と呼びます。
こうして体内にIgE抗体が作られた状態で後日納豆を食べると、腸管から吸収された納豆のポリガンマグルタミン酸に免疫細胞が過剰反応を起こします。大豆そのもののタンパク質ではなく、クラゲと納豆に共通するネバネバ成分に対して抗体が作られてしまう交差反応こそが、サーファーが納豆を食べられなくなる理由の全貌です。