トップスケーターを育成するために必要なコストは、一般的なスポーツの常識を遥かに凌駕する。フィギュアスケートコーチの個人指導料は、世界的なトップクラスとなれば1時間あたり数百ドルから千ドル以上に及ぶことも珍しくない。これにリンクの貸切代、振付師への依頼料、トレーナーやメンタルコーチへの報酬が加算される。
年間にかかる強化費用は数千万円規模に達し、遠征費やコーチの帯同費用、滞在費もすべて選手側の負担となるのが通例だ。トップコーチとの契約においては、基本指導料に加えて賞金やスポンサー契約料の一定割合をインセンティブとして支払う条項が盛り込まれるケースも存在する。
名コーチ陣が選手を受け入れる際の選定基準も極めてシビアだ。単に運動能力やジャンプの才能があるだけでは門前払いを食らうことも少なくない。コーチが最も重視するのは、過酷な練習に耐えうる知性と素直さ、そして何より「家族を含めたサポート体制と経済的基盤」である。氷上の芸術を完成させる裏には、極めて現実的でシビアな契約と投資の力学が働いている。