映像文化の歴史を振り返ると、名優たちがこの稀代の巨人をいかに演じ分けてきたかという変遷自体が興味深い。日本放送協会が手がける歴代の大河ドラマにおいて、西郷隆盛は常に時代の精神を映し出す象徴としてキャスティングされてきた。1990年放送の名作『翔ぶが如く』では、西田敏行が豊かな表情と深みのある芝居で西郷の内面的な温もりを表現し、今なお語り継がれるスタンダードを築いた。
そして2018年の『西郷どん』において、主演の鈴木亮平が見せた肉体へのアプローチはまさに圧巻だった。もともと186cmという恵まれた体格を持つ鈴木は、過酷な増量とトレーニングによって体重を20kg以上増やし、晩年の西郷が持つ重厚な肉体美を徹底的に再現。史実が示す西郷のスケール感に真正面から挑んだその役作りは、歴代のテレビドラマの歴史に新たなリアリズムの基準を打ち立てた。