「やればできる魔法の合言葉」として広く浸透しているこのフレーズですが、受け手の心理状態によっては深刻な弊害をもたらすケースが少なくありません。特に幼少期から「やればできる子」と言われ続けて育った人が、大人になってから過度なプレッシャーに苦しむ現象は、臨床心理学の現場でも頻繁に報告されています。
この言葉が持つ最大の落とし穴は、「まだ本気を出していないだけ」という自己防衛の逃げ道を作ってしまう点にあります。「本気を出して失敗したら、自分には才能がないことが証明されてしまう」という恐怖心が芽生えると、自尊心を守るために無意識に努力を回避するようになります。結果として、挑戦そのものを先送りする悪循環に陥るのです。
さらに、指導者や親が無自覚に使う「やればできる」には、「今はやっていない」「結果を出していない」という現状への否定的なニュアンスが言外に含まれがちです。励ましのつもりが、受け手には「現状の努力不足を責めるプレッシャー」として伝わり、自己肯定感を著しく低下させる要因となります。