『もののけ姫』における音楽制作は、作曲家・久石譲と監督・宮崎駿による真剣勝負の連続であった。過酷な古代の自然と人間の抗争を描くにあたり、宮崎駿が求めたのは過飾を排した荒々しい音響世界。これに対し久石譲は、あえてフルスケールのオーケストラ編成を提示した。
当初、対立を孕んでいた二人の視点は、試行錯誤の果てに見事な調和へと昇華する。シンセサイザーのデモ音源から壮大な管弦楽へと着想がスケールアップする過程で、管楽器の咆哮や重厚な弦のピチカートが誕生した。このオーケストラサウンドこそが、森の神々と人間の業がぶつかり合う凄絶なドラマを補完する唯一無二のピースとなったのだ。