市場の通路は、大人二人がすれ違うのがやっとの幅しかない。頭上を覆うレトロなアーケードの隙間から陽光が差し込み、氷の上に並べられた鮮魚の鱗をきらきらと輝かせる。ここで供されるカツオの藁焼きタタキは、都会の居酒屋で出合える代物とは根本から別次元の存在だ。
職人が束ねた乾燥藁に火を放つと、一瞬にして数メートルの紅蓮の炎が吹き上がる。一気にカツオの表面を包み込み、皮目をパリッと香ばしく焼き締めながら、内部には一切熱を通さない。この瞬間的な高温調理こそが、魚の旨味を閉じ込める秘訣だ。切り分けられた身は、外側が温かく香ばしく、芯はひんやりと冷たい。ニンニクのスライスと刻みネギを豪快に乗せ、粗塩や特製のポン酢で頬張ると、濃厚な赤身の脂と藁の薫香が口いっぱいに広がる。
背後にあるのは、土佐の一本釣りと呼ばれる伝統漁法の矜持だ。網で獲るのではなく、一本の釣り竿で魚体を傷つけることなく一匹ずつ釣り上げる。釣り上げられた瞬間から鮮度保持の処置が施されたカツオは、身の弾力も血の澄み具合も格別である。