紫という色が英語表現の中でこれほど多彩な広がりを持った背景には、ドラマチックな歴史的事件が存在する。1856年、イギリスの18歳の化学者ウィリアム・ヘンリー・パーキンが犯した思いがけない実験の失敗だ。
マラリアの特効薬を合成しようとしていた彼は、偶然にも世界初の人工合成染料「モーブ(Mauve)」を発見した。それまでの時代、紫は貝から極小量しか採取できない超高級品であり、王族や貴族しか着用を許されない「特権の象徴」だった。「born in the purple(高貴な家柄に生まれる)」という英語の慣用句が生まれたのも、まさにこの時代背景に由来する。
パーキンの偉業により、紫は一気に庶民の手へ渡った。色そのものの普及に伴い、英語の語彙空間にも多角的なカラーネームが雪崩のように流入したのだ。