「韓国語でバイバイってなんて言うの?」と問われた際、多くの入門書やネット記事は「안녕(アンニョン)」と答える。間違いではないが、実務上は極めて危険な省略だ。アンニョン意味を漢字に還元すると「安寧」であり、文字通り「平穏無事であること」を指す。出会い頭の「こんにちは」と別れ際の「バイバイ」の双方で機能する極めて便利な万能単語だが、決定的な条件がある。それは「完全なパンマル(タメ口・親友同士の表現)」であるという点だ。
韓国語学習アプリやWebサービスを展開するKOREACT(コリアクト)の創設者でTOPIK(韓国語能力試験)6級を保持する専門家らの分析によれば、日本語の「バイバイ」は親しい先輩や同僚に対してもトーン次第で許容されるケースがある一方、韓国語のアンニョンはわずかでも社会的・年齢的な序列が上の相手には一切通用しない。目上の人に対して「アンニョン!」と声をかける行為は、日本語で言えば社長や大学教授に「おっす!じゃあな!」と手を振るのに等しい無礼にあたる。
さらにネイティブのリアルな日常会話では、別れ際にアンニョン一言で終わらせることはむしろ稀だ。「気をつけて帰ってね」を意味するチャルガ韓国語(잘 가 / チャルガ)や、「また会おう」を意味する「ト ボァ(또 봐)」がセットで使われるのが通例である。直訳の知識だけで会話に臨むと、意図せず冷淡な印象や無礼な態度を与えてしまうのが、この挨拶に潜む最大の落とし穴と言える。