暗闇の海岸で夜光虫が青白い光を放つ現象は、生物発光(バイオルミネセンス)の一種です。この発光は常に光り続けているわけではなく、外部からの物理的刺激に反応して瞬間的に光る「刺激発光」という精巧な防御メカニズムに基づいています。
体内には発光物質である「ルシフェリン」と発光酵素「ルシフェラーゼ」を含んだ発光顆粒(シンチロン)が存在します。波のうねり、岩にぶつかる衝撃、魚の遊泳、あるいは人間の足踏みなどによって細胞膜に物理的な圧力が加わると、細胞内のプロトン(水素イオン)が流入してpHが変化し、化学反応が引き起こされて波長約470ナノメートルの青い閃光が発生します。
なぜ青い光なのかという点にも、進化上の明確な理由があります。青色光は海水中で最も減衰しにくく遠くまで届く波長であり、捕食者に対して「刺激に驚いて発光することで、さらに大型の天敵を呼び寄せて捕食者を撃退させる」という防衛戦略(発光警報仮説)として機能していると分析されています。