稲葉氏の歴史を語る上で欠かせないのが、戦国時代の動乱期における圧倒的な存在感だ。織田信長や豊臣秀吉といった時代の覇者たちと巧みに距離を保ち、あるいは重用されながら領地を守り抜いた。その中心人物である稲葉一鉄(良通)の決断力と頑固さは、後世にまで「一鉄」の語源として語り継がれている。
さらに、一鉄の孫にあたる稲葉正成と春日局の物語は、江戸幕府の基礎固めにおいて決定的な役割を果たした。権力の渦中にありながらも家名を存続させ、格別の待遇を得るに至った背景には、卓越した政治的感覚と、血縁を超えた組織力があった。揺れ動く時代の中で一族の暖簾を守り切った外交手腕は、現代の組織経営においても実に示唆に富んでいる。