『アンナチュラル』を語る上で欠かせないのが、劇中における『Lemon』の挿入歌タイミングの凄まじさです。多くのドラマでは主題歌がエンディングロールとともに定位置で流れるのが通例ですが、本作では毎話異なるクライマックスの「感情の臨界点」に合わせて楽曲がカットインします。
特に第4話「誰がために働く」におけるケーキ工場の事故シーンや、第5話「死の報復」の雪が舞い散るラストシーンでは、登場人物たちの慟哭や静かな決意と『Lemon』のイントロ・サビが見事にシンクロしました。「ここで流れるのか」と息を呑む演出は、演出を手掛けた塚原あゆ子監督をはじめとする制作陣の並々ならぬこだわりによるものです。
米津玄師自身が楽曲制作中に最愛の祖父を亡くした経験が投影されているという歌詞には、「大切な人を失った喪失感」と「それでも続いていく生への祈り」が色濃く刻まれています。このテーマ性が、大切な人を不条理に奪われた遺族や法医解剖医たちの心情と鏡のように重なり合い、視聴者の涙腺を激しく揺さぶりました。