1990年代半ば以降、この枠の伝説を語る上で外せないのが木村拓哉の存在だ。1996年に社会現象を巻き起こした『ロングバケーション』では、ピアニストを目指す不器用な青年を演じ、世の男性たちにピアノを習わせるという異例のブームまで創出した。日常の延長線上にある繊細な心の揺れをナチュラルに演じ切るスタイルは、テレビドラマの演技規範そのものを更新していった。
さらに2001年の『HERO』は、全話平均視聴率が30%を超えるという前人未到の記録を達成する。型破りな検事・久利生公平の痛快な活躍は、視聴率という指標が社会的な一体感と同義だった時代のラストピースともいえる。木村拓哉が主演を務める作品は、常に時代の欲望と正義感を映し出す巨大な鏡だった。