「ブリーチ=髪の色をすべて白金近くまでリセットできる魔法の薬剤」という認識は、黒染め履歴のある髪においては大きな誤解です。通常のバージン毛に対するブリーチと、黒染め履歴毛に対するブリーチでは、薬剤が作用するターゲットそのものが根本から異なります。
黒染め後のブリーチが抜けない理由は、地毛の黒さを作る「メラニン色素」と、黒染め染料である「酸化染料(ジアミン等)」の化学的性質の違いにあります。ブリーチ剤(過硫酸塩配合の脱色剤)は、天然のメラニン色素を酸化・分解して無色化する力に非常に優れています。しかし、黒染めの際に髪の深層部(コルテックス)で強固に結合・巨大化した人工の黒色染料分子を分解するのは非常に不得意です。
その結果、ブリーチを行ってもメラニン色素だけが先に破壊され、人工の強烈な赤〜オレンジ色の色素(残留ティント)だけが毛髪内に頑固に取り残されます。これが、黒染め後のブリーチ1回で「根元だけ明るい金髪になり、黒染め部分が濁った赤褐色になる」という典型的なトラブルの物理的メカニズムです。
「半年経って色が落ち、茶色っぽくなっているから大丈夫」という思い込みも危険です。目視では退色して見えても、髪の内部には巨大化した黒色染料の芯が確実に残留しています。時間を置いても人工色素は自然消滅しないため、物理的な除去アプローチが必要となります。