「夜の蝶」という言葉の直接の起源は、1957年(昭和32年)7月に公開された大映製作の同名映画『夜の蝶』(監督:吉村公三郎、脚本:新藤兼人)にあります。映画が大ヒットを記録したことで、タイトルであったフレーズが流行語となり、クラブや高級バーに勤めるホステス全般を指す表現として全国に定着しました。
それ以前の日本では、夜の飲食店で接客に従事する女性を「女給」や「バーのホステス」、あるいはより直接的な表現で呼ぶのが一般的でした。しかし、映画のヒットを契機に、夜の帳(とばり)に舞う妖艶で優美な姿と、どこか儚さを秘めた生き様が「蝶」のメタファーと見事に重なり合いました。この言葉の誕生によって、水商売に従事する女性たちの存在は、単なる接客業を超えた一種のロマンとステータスを帯びるようになったのです。