平成の音楽史に燦然と輝く名曲『さくら』(ケツメイシ)のミュージックビデオは、楽曲そのものの切なさとシンクロする短編映画のような完成度で人々を魅了した。当時、モデルとして絶大な人気を誇っていた鈴木えみの起用は、単なる話題作りにとどまらない決定的な演出意図が隠されていたという。
制作スタッフが求めたのは、画面に現れた瞬間に観客の心を掴み、どこか儚げでありながら圧倒的な存在感を放つヒロイン像だった。雑誌のトップモデルとして類まれな透明感をまとっていた彼女は、まさにイメージそのもの。決定の背景には、楽曲の持つ淡い郷愁と青春の痛み、そして時の過ぎ去る速さを視覚化したいというクリエイターたちの強いこだわりがあった。