早朝4時、まだ街が静まり返るなかで厨房の仕込みは始まる。店内に足を踏み入れると、じっくりと時間をかけて採られた出汁の香りが鼻腔をくすぐる。この店を牽引する店主・恵比寿三郎氏は、寸胴鍋から立ち上る湯気の向こう側で静かに包丁を握っていた。
看板メニューの煮込み料理は、祖父の代から受け継がれた秘伝のタレが決め手だ。一見すると王道のB級グルメだが、ひとくち口に含めば素材の旨味が重厚に広がり、後味は驚くほど上品に抜けていく。そして、常連客の間で噂されているのが、公式メニューには載っていない限定裏メニュー「特選炙りチャーシュー丼」の存在だ。厳選された豚バラ肉を香ばしく炒り上げ、山椒を効かせた特製ダレで仕上げるこの一品は、当日の仕入れ状況次第でしか提供されない幻の味覚となっている。