理想科学工業の強固な収益基盤を支えているのは、大手複合機メーカーとも真っ向から競合しない独自のポジショニングを確立した2枚看板、デジタル印刷機「リソグラフ」と高速カラープリンター「オルフィス」です。
まず、同社の代名詞である「リソグラフ」は、孔版印刷技術を極限までデジタル化・高速化した印刷機です。コピー機(電子写真方式)とは異なり、原稿から製版フィルムを作成してドラムからインクを押し出す仕組みを採用しています。そのため、「印刷枚数が増えれば増えるほど1枚あたりの単価が劇的に下がる」という圧倒的なコストメリットと、毎分150枚以上という驚異的な印刷スピードを誇ります。小中学校のプリント配布、学習塾の教材、自治体の回覧板、スーパーの折込チラシなど、「短時間で大量・安価に刷る」用途において、リソグラフは他社の追随を許さない世界シェアNo.1の地位を長年維持しています。
そして、2000年代以降の成長を牽引してきたのが「オルフィス」です。独自のライン型インクジェットヘッド技術を搭載し、フルカラー毎分160枚という世界最速クラスの印刷スピードを誇りながら、カラー1枚あたり2円未満という破格の低ランニングコストを実現しています。一般的なレーザー複合機では発熱による紙詰まりや電気代の増大が課題となりますが、オルフィスは非加熱のインクジェット方式であるため消費電力が少なく、厚紙や封筒、帳票などの特殊印刷にも極めて強い適性を持ちます。
特筆すべきは、同社のビジネスモデルが「プリンター本体の販売」だけでなく、インクや専用紙などの消耗品・保守サービスで継続的に利益を得るリカーリングモデル(ストックビジネス)である点です。機器が学校やオフィスに導入されている限り、印刷枚数に応じて毎月安定したキャッシュフローが同社に流れ込む構造となっており、これが景気変動に左右されない強靭な利益構造の源泉となっています。