ネモフィラが辿ってきた植物学的な足跡を辿ると、この花が持つ「逞しさ」の正体がより鮮明になる。19世紀のイギリスを代表する植物学者ジョン・リンドリー(John Lindley)は、北米大陸から持ち込まれた未知の植物群を精力的に分類・記載し、園芸界にその存在を広く知らしめた立役者の一人だ。彼が注目したのが、北米原産の一年草であるムラサキ科(Boraginaceae、旧ハゼリソウ科)のネモフィラ属が持つ、特異な環境適応能力だった。
肉眼で見ると頼りなげな細い茎と柔らかな葉を持つが、根系は砂混じりの痩せた土壌に素早く活着し、春先の激しい気温変化にも屈しない。園芸植物としての「可憐」な佇まいとは対照的に、植物学的な本質はきわめてプラグマティックな開拓者なのだ。「どこでも成功」という花言葉は、机上の抽象的な賛辞ではなく、ジョン・リンドリーら近代植物学者たちが目の当たりにした、過酷な生態学的リアリズムの裏返しにほかならない。