多くの人が「チキン南蛮」と聞いて思い浮かべるのは、濃厚な白いタルタルソースだろう。しかし、ここ延岡の地で産声を上げたオリジナルは、その常識を鮮やかに覆す。皿の上に鎮座するのは、黄金色の衣をまとった鶏肉と、特製の甘酢タレのみ。極めてシンプル、だからこそ誤魔化しがきかない。
初めて訪れた観光客は一様に驚く。「ソースは忘れたのか?」と。だが、一口食べればその疑問は歓喜へと変わる。甘酸っぱいタレが衣に染み込み、鶏の旨味をダイレクトに引き立てるのだ。この引き算の美学こそが、半世紀以上愛され続ける理由に他ならない。