食べログの高スコア店に並ぶだけでは、熱海銀座のディープな魅力を半分も見落としている。表通りの喧騒からわずか数メートル、人ひとりがやっと通れる路地へと足を踏み入れてほしい。
地元漁師や長年暮らす常連客が暖簾をくぐるのは、飾らない干物居酒屋や、元スナックを改装したナチュラルワインバーだ。相模湾で早朝に揚がったばかりの朝獲れアジは、角がピンと立ち、脂が乗っていながら驚くほど澄んだ旨味を放つ。店主が目の前の七輪でじっくり焼き上げてくれる干物の芳醇さは、有名レストランのコース料理を軽々と凌駕する感動がある。
「熱海の本当の味は、路地の奥にある」。カウンター越しに常連客が教えてくれたその言葉通り、路地裏に隠された無骨な名店こそが、旅人の記憶に深く刻まれるはずだ。