1962年に兵庫県で生まれた笹井芳樹氏は、京都大学医学部を1986年に卒業後、内科医師としての臨床研修を経て基礎研究の道へと進みました。知的好奇心と極めて精緻な実験デザイン力は当時から抜きん出ており、京都大学大学院医学研究科を修了後、発生生物学の世界的権威であるエドワード・デロバティス教授が率いる米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)へ留学します。
UCLA滞在中の1994年、笹井氏は神経発生を司る重要なシグナル分子「コーディン(Chordin)」の単離・同定に成功しました。この発見は、無秩序に見える胚の中で細胞がどのような指示を受けて脳や神経へと運命づけられるのかという、発生学における数十年来の謎を解き明かす画期的な成果でした。
帰国後の1998年、わずか36歳という異例の若さで京都大学再生医科学研究所の教授に就任します。臨床医学と基礎生物学を高度に融合させる類まれなビジョンを持っていた同氏は、2000年に設立された理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター(CDB、神戸)の立ち上げに中核メンバーとして参画。グループディレクターおよび副センター長として、日本の再生医療研究を瞬く間に世界トップクラスの拠点へと押し上げました。