本作が他のラブストーリーと一線を画す最大の理由は、七月隆文の原作が持つ唯一無二の設定にある。隣り合うふたつの世界では、時間の流れる方向が真逆に位置する。30日という限られた交差期間の中で、高寿の「未来」は愛美の「過去」であり、愛美の「第一日」は高寿の「最終日」となる。
この緻密なSFファンタジー設計は、一度観ただけでは気づけない細やかな伏線に満ちている。冒頭で愛美が高寿の何気ない言葉に突然涙を流す理由や、初対面のはずなのに彼の好みを熟知している仕草。物語が進むにつれて視点が反転し、観客は前半に感じた微かな違和感がすべて愛美の痛切な覚悟だったことを知る。時空の歪みがもたらすこの構造美こそ、宝島社から生まれた原作が持つ真骨頂と言える。