本作の深みは、主役の二人を取り巻く周囲の人間模様が極めてビターに描かれていた点にある。片岡鶴太郎が演じた大黒沢貞九郎は、コミカルなムードメーカーでありながら、報われない想いを抱える男の哀愁を見事に体現。お笑い芸人から本格派俳優へと脱皮を遂げる重要な転機となった。
トップアイドル・歌手として一世を風靡していた岩崎宏美のキャスティングも鮮烈だった。沖中美和という陰影のある大人の女性像に挑み、劇中歌の叙情性とともに視聴者の胸を締め付けた。さらに手塚理美の凛とした佇まい、山下真司が醸し出す不器用な実直さ、岡安由美子の瑞々しい存在感が複雑に絡み合い、単純な恋愛劇にとどまらない濃厚な人間ドラマを構築した。