近年のアニメシーンにおいても、土師の演技力は新世代の視聴者に強烈な爪痕を残している。大ヒット作『SPY×FAMILY』の最重要ターゲット、ドノバン・デズモンド役がその最たる例だ。
登場シーンこそ決して多くはない。だが、一度口を開けば、底の知れない異様さと国家を揺るがすフィクサーの不気味さが画面いっぱいに広がる。怒鳴るわけでも、脅し文句を並べるわけでもない。ただ静かに言葉を置くだけで、周囲の人間を支配してしまう静かなる威圧感。この「沈黙すら雄弁に語らせる技術」こそが、土師孝也という表現者の真骨頂である。
ロイド・フォージャーとの緊迫した対面シーンで放たれた一言一言は、作品のトーンを一瞬でシリアスなスパイ劇へと引き戻す凄まじい推進力を持っていた。